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[コメント] 異邦人(1968/仏=伊=アルジェリア)

異端者は抹殺される。
たわば

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







母親の葬式で泣かなかったことや、神を信じないことで罪が重くなる。しかも本当の被害者であるアラブ人に世間の同情は皆無。この映画は、全体主義のように異端を認めない社会への批判である。

主人公は生きることになんの希望も見出せず、ただ流されるように日々を生きていたが、はずみで人を撃ってしまう。一発だけなら過失で済んだかもしれないのに、4〜5発撃った。一体なぜ・・・?

「太陽がまぶしかったから」

では太陽とはいったい何? 主人公は学問をあきらめたと語っている。それから人生に何も期待しなくなったのだと。つまり太陽とは、自分をそうさせたものの象徴であり、それに対し、彼は引き金を引いたのではないだろうか。太陽とは、自分の夢や目標を阻むもの=育った環境や社会、あるいは国家なのかもしれない。では、なぜアラブ人を?それは彼らがよそ者であったから。これは主人公の単なる差別意識ではなく、自身が感じてきた「異端者は排除される」という疎外感の投影だったのではないだろうか。自らが異端者として世の中に受け入れられない自覚があった主人公は、同じ異端者に自分自身の影を見出し、そんな自分を消し去りたかったのかもしれない。

最初は、生きる希望を見出せない主人公に、やる気が感じられず感情移入できなかった。だが、彼にとって生きることが、不本意に世間の常識やルールに従わされ、自分を偽り、感情を押し殺すことであるというのならば、そんな世界から解放されるラストは、ある意味幸せと呼べるのかもしれない。彼は太陽を撃つことで自由の国へ旅立てたのだ。アラブ人には迷惑な話だが・・・。

(評価:★4)

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