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[コメント] マッキラー(1972/伊)

これぞ自他共に認めるルチオ・フルチの最高傑作。フルチのバックグラウンドにあるイタリアン・ネオリアリズムが透けて見える。
Soavi

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ともかく見終わった後の衝撃が強く、重い。「少年たちの魂を救うためには、その肉体を滅ぼさねばならぬ」と決意した犯人の心理が、決して狂気や倒錯ではなく、やむにやまれぬ愛情から生まれたことが痛いほど伝わってくる。閉鎖的な「村」の中で大人たちの心が蝕まれていき、それに子供までもが巻き込まれていく。貧困や無知が過激な暴力をつくり、誰もが自分の中の「邪悪さ」に直面してしまう。一体教育者は何をしたら良いのか。

全体に露出オーヴァー気味の画面と、泥や砂にまみれた登場人物が見事な効果を発揮している。冒頭から思わせぶりに登場する高速道路は、新たな交通システムが僻地にすら悪徳を送り込むとでも言いたげだ。ともかく後のフルチ作品のようにオカルティズムに走らないために(ちょっとは出てくるが)、息詰まるようなリアリティーがうまく話に与えられている。イタリアン・ネオリアリズムと呼ばれた映画人たちは、戦争直後の悲劇と苦難を、感傷性をそぎ落として提示した。全く持って意外だが、フルチは彼らの遺産を見事に継承している。貧困が生み出す悲劇を、感傷のかけらもなく、正確にフルチはつかみ出している。

(評価:★5)

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