ハリウッド色に染まる前の、古き良きノーランのサスペンス。正義と悪の境界線に立つ主人公の苦悩とサスペンスを融合させた濃厚な一本だが、ストーリーゆえに暗く地味で、よほどの映画好きかジジババにしかウケないかも。

ベテラン刑事が素人殺人犯に振り回されるという流れは正直どうかと思うが、それぞれの人物の立場を上手く利用した展開が面白い。ドーマーがハップを撃ち殺してしまった状況、本当に誤射でも他人から見たら「誤射でした」では通じないだろなぁ。もしこの事件をニュースで見たら、絶対故意じゃんって思うもん。ドーマーは終始、この胃が痛くなるようなギリギリの状況に置かれるもんで、観てるこっちも胃が痛い。疑いを隠すためにさらにドツボへハマっていくスパイラルが、ただの暴力で解決してしまうラストは強引なのだが、最期にエリーに託すメッセージが泣けるので余韻は良い。

また、ドーマーのステータスを暗示するかのような画面の扱いも良い。パチーノのめっちゃ眠たそうな目、ダークブラウンの色調や、そこに差し込む光。光を邪魔な存在として扱ってる映画は少ないんじゃないだろうか？とにかく画面が眠そうなので、この作品観て寝ちゃった人には誤爆だったんじゃないだろうか。