俺が住んでる街の港近くにはドデカい工場があり、その敷地内には絶えず煙を出し続けるドデカい煙突が何本か立っている（一時、公害病にならないかと心配したこともあった）。俺の中学はちょうどその近くだったのだが、教室の窓からその煙突を眺めることが出来た。冬になると部活が終わって下校する頃には外は真っ暗だったのだが、たくさんのライトが点灯した煙突と工場は、まるで『ブレードランナー』の冒頭に登場する未来都市の一部であるかのようだった。当然誰にも理解してはもらえなかったが。

それでもって、その工場と本作に登場した工場ってのは何か外見といい、チャリで走る人々といい（当然あそこまで多くはない）何となく似たようなところがあるような気がするのを感じたためか、『ブレードランナー』の少し前の時代の都市を描いた作品を観ていたかのような感覚に襲われた。たまに画面に映った文字や遠景で映画の中の都市が大阪であることを辛うじて頭のなかに入れることは出来たが、もう一度部分的に見直したら、「あれは大阪じゃない（行ったことはないが、あくまでテレビで見るイメージとしてご了承下さい）。もう一つの『ブレードランナー』だ」という気がしてならなかった。

それとも一つ。あのヤクザの下っ端みたいな髪型の佐藤さんを見たときに、「これが伝説の松田優作」って気付きませんでした。序盤から、「ガッツ石松のデカい顔以上に存在感出してるなぁ、この人」と思いながら観ていたところ、噂に聞く松田優作が全然登場していないことに気付いたんです。日本では松田優作の遺作として現在も名前が残ってる映画なのだから結構印象の強い役なんだろうと推測し、「だとしたら該当するのは佐藤さんしかいない！」と断定。エンドクレジットでようやく証明できました。すみません。「何じゃこりゃー」の時の髪型の松田優作しかテレビで観たことなかったもんですから・・・