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[コメント] あゝ特別攻撃隊(1960/日)

センチメンタリズムだけで扇情的な戦争映画を作っても、反戦にも平和にもならない。メッセージ以前の問題として、映画として見るところ無し。
かける

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 第一次攻撃隊の出撃時には「軍艦マーチ」、そして主人公が出撃するときには「海ゆかば」。ここまで上っ面の演出をするのであれば、戦争や特攻というものに対するアンチメッセージどころか、単なる揶揄にまで感じられる。

 また、映画としてもディテールがあまりにも稚拙。リアルなのは、機体に急ごしらえで塗った暗緑色の塗装が剥げたところから、練習機のオレンジ色の塗装がのぞいているところぐらい。

 ラストの空襲シーンでも、無理に迎撃にしようとする野沢(本郷功次郎)を小笠原中尉(三田村元)が懸命に止める。「爆装の戦闘機で何ができるッ!」

……ところがその戦闘機。ハリボテの爆弾ひとつぶら下げていない。

 予算が少ないことと、「こんなもんでいいだろう」というおざなりな姿勢は違うだろう。

 そして、その空襲で負傷した小笠原に代わって出撃を志願する野沢の動機というのが、あれでは恋人が目の前で死んだことによる自暴自棄とも受け取れかねない一本調子。

 離陸する野沢たちを帽ふれで見送る小笠原は、BGMに「海ゆかば」が高らかに流れる中、大声で「同期の桜」を歌っているようだ(これはまあ劇中で伏線があるにしても)。しかし、直前の野沢との対話で小笠原の語る内容は、海軍兵学校を出た自分の学鷲に対するコンプレックス。江田島叩き上げの職業軍人をそこまで悪し様に描写するのであれば、製作者には揶揄を通り越してある種の悪意さえあるかのようだ。

 反戦なら反戦、反日なら反日と明快な姿勢で作るべきだろうし、映画製作者として表面的な揶揄で題材に臨むのであれば、それは何に対してよりも先んじて、映画そのものに対する冒涜だろう。

(評価:★1)

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