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[コメント] プライベート・ライアン(1998/米)

誤解を招く言い方だとことわった上でいえば、人が死ぬ様はやはり美しい。
Alinax

戦闘のカットをどうも美しくとりすぎているんじゃないかな・・・。 スピルバーグ監督は見せ方を十分心得ている監督だが、一つ一つの人が倒れていくカットが明瞭すぎるあまり、 魅力的になりすぎているように思う。私はもちろん戦争に行ったことがないからなんともいえないが実際の戦場は もっと淡々としていて、シビアで、あっけないものだと想像する。

とはいっても、冒頭のシーンはやはり見ごたえがある。これほどまで観客を集中させるのは、命がかかっているからだ。 極限の状況というのは当人たちからすれば地獄の苦しみだけど、客観的には残酷なことに甘美的でさえある。 この一種倒錯的な快楽から、生者であるわれわれは目をはなすことができないだろう。かけがえのないただ一つの 生だからこそ、比類なく美しい。それを美しいと考えるのは、理性であり倫理だと思う。

しかし戦争は、戦場はそれらを失わせる。安っぽいヒューマニズムがまかりとおるほど甘くはない。 けれどもそういう救いにしがみつかないと正気を保てないような状況では、プライヴェートな問題だと 思われるような命令がパブリックにもなる。だからスピルバーグの勝ちである。利害を超えた極限でしか成立しない物語。

(評価:★4)

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