[コメント] スカーフェイス(1983/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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孤独な男が堕ちていく様、それを描く物語はもともと好みなのです。それを約3時間という上映時間で、成り上がる様から落ちぶれる様までの年月をひと通り描いてくれると、骨太な作品を観たという満足感を得られる。事実、骨太な娯楽作だった。
だが、傑作ではないのだ。傑作になるためにはドラマ要素が弱すぎた。そこはブライアン・デ・パルマが監督と考えると求めすぎなのかもしれない。ドラマを語ることよりも、映像を見せることに長ける監督なのだから。
シーンの面白さとしては、長い上映時間の中でも光るシーンが多くあった。
バビロンクラブでのトニー暗殺未遂の一連のシーン。関連人物が集まってくる店内にて、最終的には酔いつぶれるトニーを見せつつ、妹・ジーナの様子も気にさせながら、光の動きを気にしながら暗殺の機会を伺う暗殺者の2人。じっくりと過程を見せていって緊迫感を生み出すこの手のシーンは、デ・パルマの巧さが光る。
そして、ラストシーン。激しい銃撃戦の末、背後から撃たれてプールへと転落するトニーの死に様。プールが赤く染まっていく様子を俯瞰して見ると、それは儚くも美しいではないか。ここも、絵としての見せ方は見事だった。
しかし、そこに象徴されたと思うのだが、ドラマとして考えるとあのラストシーンではあっさりし過ぎているように思える。これだけトニーの生き様を描いてきたのであれば、もっともっと切なさ、哀しさを演出できたはずなのだ。『ゴッドファーザー PART2』などのように。結局のところ、落ちぶれてはいるけれども、トニーは美しく散りすぎた。彼のかっこ悪い姿を最後の最後に見せていれば、違った見え方をしただろう。そこが惜しいな、と。
とは言え、娯楽作としては申し分ない出来であり、約3時間食い入るように観させてもらった。アル・パチーノは凄まじい演技をしているし、キューバからの亡命が歯切りになるという物語の題材にはオリバー・ストーンらしさも感じるし、前述のとおりデ・パルマの映像演出によって生まれた緊迫感は計り知れないし、三者の個性はそれぞれ出ていた格好だ。それで十分でしょう。
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