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[コメント] インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国(2008/米)

脳天気な期待を抱いて劇場へ向かい、脳天気にチケットを買ってイスに座り、脳天気に興奮して満足気に帰ってきた。もうちょっと具体的に言うとわーってなってあわわーってなった。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







※下の方にシリーズ作品の軽いネタバレがあります。

 僕の中では『インディ・ジョーンズ』のシリーズは昔からそういう映画だ。周到な謎解きに目から鱗が落ちるなんてこともないし、インディの生き様に心を動かされることもない。重要な謎は大概誰かが知ってるかどこかに書いてあるかしてあって、インディがそれに沿って動いていると未知の力が発動して敵全滅。「世の中には触れてはならないものがあるのだよ」的ハッピーエンドでめでたしめでたし。ジェットコースタームービーとはよく言ったもので、それは「ジェットコースターのようにピンチが次から次へと襲い来る」だけではなく、「ジェットコースターのように“真実(魂)”がない危機」だということも含んでの呼び名なんだろう。

 ただ僕はこれ一切否定するつもりはなくて、その魂のない危機に「わーっ」とか「あわわーっ」って言ってる瞬間というのは大変に幸せな瞬間だと思うのよ。人は普通ジェットコースターで落っこちてる時に「僕は何故落ちているのか」とか「どこに向かうのか」とか「初速と加速度は」とか考えないわけで、それは逆に言えば「考えないでもいい瞬間」でもあるってことなんだ。考えない映画を観に行って考えずに騒いで帰って考えずに寝ることが大手を振って許されるなんて素敵じゃないか。しかもその主人公を昔から知ってるせいで、更に考える必要がなくなっているなんて素晴らしいじゃないか。

 中盤、マット(シャイア・ラブーフ)が息子だということが判明した直後にそれまでヘタレヤンキーだった彼が突如としてフェンシングの達人となり、ジャングルを飛び回るアメリカンターザンと化す。僕これ今作の方向性が強く現れた瞬間だと思ってて、要は「それまでヘタレヤンキーだったこと」の整合性を重視するよりも、「インディの息子だからイヤッホウ的な大活躍」の方が気持ちいいんだ。誰が気持ちいいって僕が。

 結局このシリーズっていうのは「2時間かけて物語を積み重ねていく」映画ではなく、「2時間の間に色々なものが消費できる」映画なんだ。それは水陸両用車であったり滝壺であったり軍隊アリであったり変形型ピラミッドであったりクリスタル骸骨であったりそういう色んなものだ。

 もちろん昔の方が興奮度は高かった。石の大玉やトロッコや猿の脳みその方が「あわわわわーっ」ってなった。ただ上記の通りにこの映画の性質というものを考えた場合、そんな“昔を懐かしむという快楽の消費”すらも丸抱えにしちゃっていいんじゃないかな、なんてことを考えたりするのです。観賞後に「♪ぱーぱらっぱーん、ぱーぱぱー」などと口ずさんで、翌日になったら詳細とか忘れちゃって、「でも何か楽しかったな」とか思っちゃうのも素敵だと思うのです。

 まぁ正直なところ、2作目でキー・ホイ・クアンが言った「インディ、愛してるよ」だけは猛烈に心に残っているので、本当はマットにもそれくらいの「インチキでもいいから感情を見せつける」瞬間が欲しかったという気はしなくもない。顔がちょっと緊張感ないんだよ。あとクリスタル・スカルはせっかく重要なパーツなんだから、もうちょっと重たそうな方がいい(片手じゃ持てないくらい)。まぁこの辺も僕の快楽指向の問題ではあるんだろうな。そんなところも加味して、単純快楽度の採点で☆4にさせてもらいました。おしまい。

(評価:★4)

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