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[コメント] 暴動島根刑務所(1975/日)

前作に比べると、圧倒的にこなれた感じを受けます。重厚さと軽妙さのバランスが整い、展開にもメリハリが効いている。でも何より大きかったのは、「柔の松方弘樹」に対する「硬の北大路欽也」の存在。映画全体が引き締まった感じになりました。
Myurakz

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 前作でも用いられていた「強気な顔の映像に弱気な内面の声をかぶせる」という手法、確かにコミカルで親しみやすさや可笑しさは出るのですが、正直僕は好きではありません。正確にいうと松方弘樹主演の映画にそれは望んでいない、って感じかな。もともとこの人ってけっこう優しい顔してるから、そんな演出しちゃうとどんどん格好良さが削がれちゃう気がするんですよね。

 ところが今作は同じ手法を用いながらもその回数をグッと減らすことで、格好良さをキチンと保ってくれています。そこで読み上げられるセリフも、「金一封はないんかのう」など「弱気」というよりは「ふてぶてしい」セリフが多い。これであればコミカルさも出るし、主人公のキャラクターも損なわずに済むんです。

 ただし、それだけだとまだ松方弘樹の柔和な感じは補い切れない。そこで効いてくるのが北大路欽也の登用なんです。この人、松方のような愛嬌こそありませんが、その目力は松方の柔和さを補って余りある。これで初めて、「強面だけど愛せる主人公」と「硬派なライバル」というバランスの良いセットにできあがるんです。「暴動」「脱走」と山場をしっかり設けたストーリーの上で、非常に気持ち良く2人の絡みを楽しむことができました。

 ただし、暴動直前に「め〜しよ〜こせ〜」と地獄の底から唸るような声を出す松方弘樹はちょっと、いや、かなりやりすぎ。まぁあれが松方芝居の真骨頂なのかも知れませんけど。

 あと田中邦衛が「穏健なお爺ちゃん」というのは今でこそ普通にアリなんですが、この頃だと正直やっぱり無理があると思いました。何か腹に一物ありそうに見えちゃって。ごめんね邦衛。

(評価:★4)

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