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[コメント] 必殺!III 裏か表か(1986/日)

僕の中では必殺シリーズ中のベスト作品。テレビ版をハードな方向へスケールアップしたのは大正解だと思います。お金を貰って恨みを晴らすなんて仕事は、本来これくらいヒリヒリしたものであるべきなのです。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 こっちが殺しのプロなら向こうだって悪の手練。戦いになれば命のやりとりになるし、そうなればこっちだって格好付けてる場合じゃなくなるのも当然なんです。テレビというメディア、そしてそこの1時間という枠ではできない、正に大人向けの仕事人を見せてもらいました。

 そもそも仕事人って必ずお金をもらうじゃないですか。あれっていうのは「我々は正義ではない。人を殺める以上それは決して正義ではない。しかしだからと言ってただの殺人者に堕して良いわけでもなく、そのために必ずお金をもらうんだ」みたいなポリシーがあってのことなわけですよ。つまり彼らにとってお金とはあくまで「労働の報酬」なんです。そのルールを守ることで己の主義を貫いている。

 逆に悪役は皆そのルールを破って悪事を働くわけで、だからこそ恨みを抱いて死んでいく人たちの大半が、お金を理由に殺されているわけです。つまり仕事人というドラマは「お金にまつわるルールを巡る、仕事人と悪人との争い」であるということができるわけです。

 ところが今作ではその悪役が両替商であるため、お金の扱いに滅法長けている。自らの拠り所であるお金が敵に回ることで、バタバタと倒れていく仕事人たち。何て皮肉で、しかも何て仕事人らしい死に様なんでしょう。中でも笑福亭鶴瓶演じる「参」が、誰一人殺せずに惨めに死ぬところはとても良かった。水浸しで逃げまどって泥まみれで死ぬ。お金という最大の味方を失った仕事人なんて、こんなに脆く死んでいくものなんですよ。そもそも畳の上で死のうとは思ってない人たちですし、やはり仕事人の死に様はかくも不様であるべきなんですね。

 まぁ首の顔は似てませんでしたけどね。

(評価:★5)

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