コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ラストエンペラー(1987/英=中国=伊)

昔感じた隔絶感と今感じる共通点。(レビューはラストに言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







小さな頃、映画を観るということがほとんどなかったが、わずかな例外として小学生の頃に観ていた作品。当時は皇帝溥儀と囚人溥儀の間に横たわる隔絶感(赤を基調にした紫禁城と緑がかった灰色の収容所との対比)に圧倒されていた。

しかし、物心ついて改めて筋を理解しながら観ると、目立ったのは囚人時代と皇帝時代の共通点だった。彼の周り(彼がほとんど目にすることのない周り)では、彼の力ではどうすることもできない得体の知れぬ力が働き、彼はいかなるときもその力の前に翻弄された。作品を通して一貫していたのは、彼は常に無力であったこと。自分の身近なものさえ守れなかった男。彼は文化大革命を目のあたりにして死んでいく。

それでも本作において虚しさばかりが単色の旋律を奏でていたわけではない。紫禁城に戻る溥儀。コオロギのエピソードを持ち出すまでもなく、いかに不遇の身にあったとしても、彼の人生の舞台は間違い無くこの城に存した。彼と子ども以外誰もいない紫禁城の風景。ここでの映像は寡黙でいて雄弁だ。忘れがたい印象を残す。(★3.5)

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。