●総論

宮沢りえがさまざまな局面で、書類を偽造する鮮やかな手捌きの描写にロベール・ブレッソンの『スリ』の悦楽と映画的なサスペンス、

公式があるかの如く、お金の為に人生が崩壊する行程に同監督の『ラ・ルジャン』の冷徹を想起させてくれた、

あと登場人物たちに自由闊達に、青・赤・黄色・緑などの様々な背景色を照射させる閃きはクシシュトフ・キェシロフスキの『トリコロール』並みに鮮やかだ。

適宜挿入されるスローモーションの技巧も絶妙で、美魔女系エンターテイメントに於いても吉田大八監督の天性の突出した映像感覚を、堪能した 充実の２時間でした。

●各論

（１）池松壮亮の待つホームに、宮沢りえ別のホームから舞い降りるシーンが効果的。細い脚だけ映す演出は艶めかしい。あと列車内でいきなり向かい合ってハートマークに成るとか、不倫なのに純愛ぽくて返ってエロいです。

（２）ラストの方の宮沢りえの、上座（画面向かって右側）から下座（画面向かって左側）に走り抜ける、下座の方向に駆け上がる、細身の彼女の疾走シーンに魅了されました。頑張れと内心応援しました。アラフォーにして素晴らしいランニング・フォーム、そのプロ根性。

（３）女性行員の法務みたいな制服が効果的だった。いつも自制心と神とに監視され、かつ裁かれている様な不思議な感覚。

（４）大口スーパー定期預金年利率３％（利回り高すぎｗ）とかいろいろ家で偽造する手口も、不謹慎なのだが爽快だった。スピルバーグの『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のディカプリオ以来の大物詐欺師かな。しかも女流で美しいなぁ。

（５）そもそも論ですが、銀行でパートを始めたのが横領にまでに発展した不幸。ユーキャンとかで、資格を獲って、それこそ保険の外交をすればよかったのに。医療保険・がん保険など勧めやすいですよ。りえさんクラスの美人であれば営業強いし筈だし。稼ごうと思えば枕との噂もある♪　

●キャリア

教会での少女時代のシーンは、三○のリハウスの『白鳥麗子』さんを彷彿とさせる。ＴＶで初めて彼女を見た時の清冽な美しさは衝撃的だった。少女達の群集の中、あえてクローズアップを使わずに、素晴らしく顔立ちの整ったオーラのある少女を配置するだけ で、昔の彼女と判らせる演出も、捻りがあって軽く唸ってしまいました。

りえさん１０代の時の『Ｓanta Fe』のヌード写真集とか驚愕しました♪　度胸いいですね。このお仕事を受けてさらに人気が出て来るという嗅覚が凄いです。

今回の役柄を受けるに当たって、お固い会社（銀行や保険や不動産など）のＣＭ出演は厳しくなるでしょう。それでも、濡れ場有りきのヨゴレ役で”実力派監督”作へ出演の博打に出た、あなたは美しき勝負師です！　リスクを怖れず、年齢の区切り区切りで新しくモデルチェンジして行く、あなたは、ある意味女優の鑑（かがみ）です。

富司純子さんみたいな華のある艶っぽい大女優に成って下さいね♪ （お顔立ち、妖艶な雰囲気とか似ていますよ。）

あと、例の舞台の時宮沢りえさんは急病で大ピンチの天海祐希♪さんの代役をして頂いて大いに感謝致しております。ありがとうございます。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　敬　具

追伸　遅咲きの吉田大八監督ですが、その抜群な映像感覚に今回も痺れました。今後もいい映画を撮って下さいね。期待しております。ただし、痩せ細りにはご注意くださいませ！

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●紙の月　とは　（１１／２４追記）

原作小説は未読で在りますが、自己流に考察してみました。

宇宙あれば、生き物があり、中には知的生命体も生じ、文明も築かれるであろう。

文明（経済）があれば、地球の様な物質世界であれば、価値基準及び保存性の高い、通貨制度も当然に発明される筈である。貸し借りに関する制度も洗礼されて来る。

実態経済を太陽に喩えるならば、太陽を光源として、妖しく輝くのが通貨と云う月で あろう。

通貨（お金）は単に、政府が政治的に価値を付与した紙キレであり、ハイパーインフレ・戦争等実態経済のフレアの前には儚いモノに過ぎない。

妖しい月の光に魅了され、また翻弄されるのがヒトの世の常であり、強いては大宇宙（＝神）の必然でもあるのだ。