[コメント] 家族の肖像(1974/仏=伊)
正当なのだが、どこか気恥ずかしさを感じる「私たちは皆、宇宙船“地球号”の乗組員!」てなアンニュイ文字の配列のキッチュなスローガン。それを創作した後は隠居、ではなくて、その後が大事ってことを教えてくれる作品。
静かに余生を過ごすことが果たして良いのか?健康に於いても、自分の主義主張、自分のアイデンティティーに対して嘘をつくことになってしまっている世界に対して物言いを難癖つけるルキノ・ビスコンティの沸点を超す脳から出された静かなる一撃。
誰がどの国を象徴してるのかを順々に晒していく事も可能なのだが、その行為は野暮であり間違いに気づかない無知なバカに等しい。国や個人レベルの思想は絶えず微妙に変わり、絶えず目を微妙にくらませるからだ。
人の本心を探る保身ありきの会話の姿。どこか虚無的に惰性で進んでしまっている家族。「家族とは何か?」それは「宗教、平和、人間etc...とは何か?」に繋がる。
絶えず変貌していく人や物、国や喜怒哀楽の定義にうろたえる人々と、考えを持って行動し、観察者にまわる人の対比と入れ替えが面白く、様々な意味やメッセージが、物語性を伴った作品にしっかりと根を這わせているので無限通りの解釈が出来る示唆に富んだ映画となっている。
で、作家性の濃い作品でありながら、親近感を大量に抱いた。
20003/3/4
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