この映画はエレン・バースティンの凄まじさに尽きる。

善良で、正直で、俗物で…何より絶望的な孤独に心が悲鳴を上げていて、テレビに出ることで彼女が得ようとしたのは、「私を好きになってくれること」なんて悲しすぎる。そして映画としては、肉体と精神と人生を破滅させていく過程を鬼気迫る演技で見せる彼女を見て「女優」ってのは単なる「女の芸能人」のことではないのだと再認識した。

若いグラビアアイドルは、みな女優を目指して口を揃えて「○○さんのような女優に…」と言うが、あまり簡単に口にしない方がいい言葉だと思うぞ。そもそもベクトルが違う。彼女たちのベクトルの先にいるのは実際には浅野ゆう子あたりで、政治でフジテレビあたりのドラマにもぐり込んで短い春を謳歌することはできても、老境に達したときにこの役を演じることは果たして可能だろうか？

このサラの役を、悲劇的に破滅的に観る者を絶望させるような気迫で演じられるのは樹木希林と市原悦子と、容姿がかえってハンデになりそうだが岩下志麻と大竹しのぶくらいだと思う。

それだけ「女優」って言うのは、奥の深い芸道なのですよマヤ。