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[コメント] フィルム(1965/米)

迫り来る眼。それを見まいとするキートンの背中。この不思議な空間を語り尽くすには絶対に一言じゃ無理だ。俺にはそんな能力も無い。ただ、あの眼が何かを示してくれている。これぞ短編。サミュエル・ベケットの脚本は絶対に読んでみたい。
ナッシュ13

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







鑑賞後第一に感じたことが、あの眼は死の世界で、その死の世界に怯えるのがキートンの背中なのでは?ということ。誰でも死には背中を向けたくなるだろう。その眼を見まいとする姿に、鏡や窓や猫、そして「2つの点」が登場した。

鏡はそのままの自分を写すものであるから避ける(黒マントを被せた)。窓は眼、即ち死が覗き見る可能性がある(これもカーテン?を被せた)。猫は判断が難しい。おそらく彼の愛猫であるから逃がそうとした。しかし必要以上に猫のクローズアップが使用されていた。死の世界が猫の眼にリンクしたとも考えられる。後半、猫を相手するシーンは登場しない。金魚鉢と金魚も同様で、鉢は反射するから避けた(黒マント)。金魚に至っては完全に「金魚に見られている」描写。明らかに避けている。

次に「2つの点」だが、これは椅子や封筒に見受けられた。彼は2つの点に死の世界を感じてしまいそうだったが、辛うじて冷静さを保つことが出来たと考えても良いかもしれない。ただ、封筒の中身の写真だけはどうも解からない。おそらく幼少の彼の姿なのだが、その写真を考え深げに見つめた後に破いたのは何故か…。死を悟ったのだろうか。生きてきたことが無駄だとは感じていないはず。

こうして、キートンは深い眠りにつく。

本当の意味で深い眠りにつく。

かなーーーーーり興味深い作品です。そもそも、俺は生と死を考えただけであって、ベケットはそんなこと微塵にも考えていないかもしれない。

ほんと映画って面白いです。

(評価:★4)

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