基本的にはどんでん返しモノだが、それ自体はこの映画の魅力の全てではない。 どんでん返しが出てくるはるか前の段階で ”こんな映画が出来るのか”と驚きと同時に感謝を感じずにはいられなかった。

なんということもない日常ドラマで、ＣＧもなければ売りモノになるような の派手な爆発やアクションもない。 薄暗く貧乏くさい画面になりがちな映画なのにそれを微塵も感じさせず、 むしろゴージャスでさえある。

私はキャストが実は今となっては豪華キャストだった、というのは知らなかった。 キャストはそれぞれ完璧にフィットしていたと思う。 あまり有名ではなかったはずのこの時期にこういうキャスティングをした 製作サイドのセンスには脱帽するばかり。

ストーリー展開も非常に緻密に計算されている。 とにかく飽きない。 ストーリーは少し複雑だが、それは明らかにわざとそうしている。 単純な刑事モノをダラダラとしたストーリー展開で見せられると飽きる。

奇をてらわないある意味正統派のエピソードにまず好感が持てる。 それぞれのエピソードだけを見れば極めて単純である、そしてそれ自体 魅力的である。

そしてそれぞれの複数エピソードのまとめ方がうまい。 単純なエピソードを緻密に計算して組み立てている。

画面よし、配役よし、メインストーリー（どんでん返し含め）よし、 構成エピソードの単純明快さ、よし（基本的には映画は単純明快じゃないと 面白くない。奇をてらわれると一気に冷める）、 そしてそのエピソードの組み立て、よし。 そして音楽もファッションもよし （それは個人的にはとくには印象に残ってないが） 誤解を恐れずに言えば、”完璧”な映画。