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[コメント] 春のソナタ(1990/仏)

原題より邦題の方がセンスのいい稀有な例?
TOMIMORI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ソナタとは西洋音楽における器楽曲(室内楽曲)のひとつで急−緩−舞−急の4楽章または急−緩−急の3楽章から成っていて、第1楽章がソナタ形式となっているのが基本的な形であり、ソナタ形式(A−B−Aの3部形式)とは、提示部−展開部−再現部という風に、主題が提示され、展開され、再現され終結するのだが、 主題が再現されることで、落ち着いた感じで終わりとなるのが特徴だ。(Wikipediaを参考)

この映画自体もベートーヴェンのヴァイオリンソナタ「春」で始まって(提示部)、 最後も同じ「春」で終わっている(再現部)からソナタ形式と言えるだろう。 展開部はシューマンの「朝の歌(暁の歌)」と「交響的練習曲」といったところだろうか。 音楽素人がテキトーにこじつけているだけだからあまり深くつっこまないでね。

DVDの解説にはナターシャがジャンヌのために演奏する「朝の歌(暁の歌)」が二人の関係の幕開けを暗示しているとあり、 なるほどと思ったので「交響的練習曲」(ナターシャの父親がジャンヌと二人っきりでいる時にかける曲)の方を調べたらこの曲はシューマンが後に失恋してしまう貴族の娘エルネスティーネ・フォン・フリッケンに片想いしていた頃に書いた曲らしい(失恋したシューマンを慰めたクララと後に結婚)。 従ってこれはジャンヌの父親の失恋テーマ曲かもしれない。 まあ失恋なんて大袈裟なものでなく、軽〜くジャンヌにうっちゃられたという感じだが。この曲を演奏しているのがナターシャというのがまた泣かせるではないか。

そしてこの映画ではさまざまな花や樹木が登場するが、 オープニング(ソナタ形式でいう提示部)、ジャンヌが高校から自分の部屋に帰ってきた時には生き生きと咲いていたチューリップみたいな白い花が、エンディング(再現部)ではしおれており、ナターシャに貰った花にとって替わる(であろう)シーンで終わるのだが、ここでも花で始まって花で終わるというソナタ形式であることに注目したい。 これは先に指摘した通り、父親とは恋愛関係にはならないであろうが、 ナターシャとの友人関係は続くことを示唆しているのかもしれない。 ネックレス事件も解決したしね。

というわけで監督の演出を汲み取ったこの邦題は原題に比べるとかなりセンスがいいのではないでしょうか。

ちなみに最近知ったのですが、邦題の『ランボー』(原題は『First Blood』)はアメリカ人が気に入って2作目から使うようになったらしいですね。

(評価:★4)

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