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[コメント] 太平洋戦争の記録 日本かく戦えり(1956/日)

本来ならば、この貴重で命懸けで涙無くしては見れない映像の数々に最大限の敬意を表して★5を点けなければならない。しかし、編集・音楽・ナレーションによって映像は目的を持った意思を持つ。知らず知らずに米兵の無事を祈る自分が怖い。
sawa:38

これはアメリカ国防総省の特別許可により日本で製作されたものである。だが、日本側のフィルムは圧倒的に少なく、米軍主体のフィルムで繋ぎ合わされて行く。それは仕方のない事だし構わない。

しかし「悪=日本、善=米」という前提があっての編集が辛い。

畑を踏み荒らす日本軍戦車の映像に繋ぎ合わされる現地の人々の顔。七面鳥撃ちのように引き金を引く米兵の映像には樹上から転げ落ちる日本兵の映像が繋ぎ合わされる。

ナレーションは何故か英語を直訳したような「変な日本語」を喋る。「あっ!日本兵が米兵の前を駆け抜けた!」「日本の女は崖から飛び降りた」

緊張感ある音楽だったが、時折米軍の攻撃時には軽快なマーチになることもある。そして戦闘の合間の米軍兵士の休息時には穏やかな音楽が流れ、米軍兵士の無事を知らず知らずに喜ぶ仕掛けになっている。

大変貴重なフィルムの数々。それらを無意味にランダムに繋いで垂れ流す訳にはいかない。映画にするには必ず素材の「取捨選択」と「編集」が必要になる。そしてそこには「意思」が介入する。ドキュメンタリーといえど避けられぬ宿命である事は充分承知はしている。

ただ、哀しいのは、日本で制作された映画でありながら、あたかもアメリカで制作されたかのような「自虐感」が漂うことだ。勿論戦時中ではなく、同盟国となった直後であるから日本兵に対して侮蔑感はなく、多少の敬意が払われている事が幸いであった。

(評価:★3)

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