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[コメント] K-20 怪人二十面相・伝(2008/日)

賛否両論のストーリー展開だが、乱歩自身の創作姿勢が、このような後継作品を生む土壌を元来持っているのだと思う。
hiroshi1

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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北村想の原作未読と断りを入れた上で。

冒険活劇としては十分水準に達している作品で、CGもCGのためのCGではなく、劇を構成するための一要素として働いている事に好感を持てた。

乱歩が本格推理小説を愛好し、S.S.ヴァンダインやエラリー・クイーン等の紹介を積極的に進め、日本に推理小説の定着を推し進めた大功労者であることは言うまでもないが、その反面、実作者としては本格推理をあまり得手にしていなかったことも良く知られた事実である。

明智小五郎と怪人二十面相は、日本を代表する名探偵とその敵役として名声を馳せながらも、実像にいまいち血の通わないイメージが出来上がっているのは、幻想的な作風を得意とする乱歩の本領と反した探偵モノの作品群中で、記号としての名探偵、敵役としての役割しか与えられていない二人に対する描写の淡白さが原因なのではないか。

明智小五郎と小林少年独特の不安定さというか胡散臭さが、二十面相が敵役として振舞うことにより解消されてようやく居場所の安定を見せるという、もともと乱歩作品の持つ危うさが、結果的に本作のような逆転劇を生みうる土壌になっているような気がする。

(評価:★3)

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