海中に浮かぶマリンスノーの揺らめき、クラゲ達の質感と浮遊感は目を見張る。前作と比べて単純なストーリーだが、お得意の人間の所作をカリカチュアライズしながら、それぞれ十分に立ったキャラクター達の動きや小ネタの数々で、観るものを飽きさせない。相変わらず作劇と画面設定のレベルが高い。

　しかし今回はいつものピクサーにあった、どこか社会をナナメに観ているような、常識的なものを疑ってかかり、そのうえでさらに面白がっているような感覚が希薄に思える。ニモがチャレンジドな子どもであること、ドリーが健忘症だか前向性記憶障害だかＡＤＨＤだかで、でもお互い支え合って頑張る、というのもなにかとってつけた”常識的”社会性のようで、果たして設定上必要だったのか、ちとギモンがのこる。ドリーはそういうパーソナリティという描写だけで良かったのではないか。ワタシにとっては、やや苦笑いなんである。