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[コメント] 演じ屋 第壱幕(2001/日)

野口監督の最高傑作。
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脚本・監督の野口照夫氏は1974年生まれ。大学在学中に現在の主力会(『演じ屋』を製作した集まり)の元になる映画部を結成し、卒業後は映像制作会社で編集や演出などをしていましたが2001年からフリーとなり、同年『演じ屋』を撮りました。その後は、よみうりテレビ深夜枠でテレビドラマ『駄目ナリ!』を監督(脚本)しましたが、今後もテレビドラマの予定有り、というのが大まかな経歴です。主人公役の笠原紳司さんと今井孝祐さんは、野口さんとは大学の映画部時代からの繋がりです。笠原紳司さんは他の映画やテレビドラマにも出演されていますが、(この『演じ屋』を観れば一目瞭然ですが)野口さんほど彼の魅力を引き出せる人はいません。笠原紳司さんは、仲代達矢主催の「無名塾」で3年間の修行の経験がある他、『未来戦隊タイムレンジャー』のタイムファイヤー役も演じていました。勝村美香ちゃん(タイムピンク)や、後に登場する倉貫匡弘くん(タイムグリーン)が『演じ屋』に出演しているのは『タイムレンジャー』繋がりです。やはりと言うかこの3人は際立って演技が上手く、オーラが違うのもその為です。

連続ドラマ形式というのも珍しいのだけれど、野口さんが後にテレビで活躍する様になるのを見ても、この時からテレビを意識しているのかもしれません。というかご本人が、「そのままテレビドラマとして放送できるのを意識していた(=いつかテレビで放映されるのを期待して)」と仰っていた記憶があります(違っていたらすみません)。それから、『演じ屋』はごく一般的なデジタルビデオカメラで撮影されていますが、映画っぽく見えるのは何故かという話を聞いた事があります。気の遠くなる様な大変な処理作業がなされているそうです。(もしかしたら今はそういう処理も簡単に出来るような機械やソフトが出てきているのかもしれないけれども。)

米国では、テレビドラマでも映画と同じフィルムを使っているのでああいう映画の様な画質になっているのだとか。何故日本ではテレビドラマでああいう画質なのかと言うと、安いフィルムを使っているからだと聞きました。よみうりテレビで放送された野口さんの『駄目ナリ!』の場合、撮影機材は劇場映画でお馴染みのHD24Pとかいうものを使用していたらしいですし、芝居が練りやすい理由からワンカメにこだわって行われ、一般的にテレビドラマでされているマルチアングルでの撮影手法を使っていませんでした。その手法も映画的なのに加えて、画面のサイズも4:3のスタンダードサイズではなく、16:9のビスタサイズに設定されていたし、深夜ドラマどころかプライムタイムのドラマを画質の上でも上回っていました。なんというか、まさに”映画のひと”が作ったテレビドラマでした。そういう事から考えても、野口さんは最初(演じ屋)の時から映画を撮りつつも既に(将来的に)テレビをターゲットとしていたのかな、と思います。或いは、テレビと映画の良い部分を取り合わせようと。

駄目ナリ!』ではアンガールズを発掘してきて起用した野口さんですが、『演じ屋』のコメディー要素でも分かる通り、お笑いが大好きらしいです。ストーカー役の重城一馬さんも、お笑いユニット<バフドクロ>に所属している人です。なんだか解説が長くなってしまいましたが内容については後で書きます。とりあえずコメント書かなきゃ!と急いで書いたので。

多分『演じ屋』を観て、「ふーん、自主映画ねぇ」となるか、ならないかと言うのは、ひとつに作る側になりたい、なっている、なった事がある、興味がある、の違いがあるのかもしれないと思う。わたしは作る側に回りたかったけれど少しもなれなかったから、だからこんなにこの映画を愛しているのかも知れない。制作費に数億円を掛けなくたって、10万円だって、限られた人材でも、面白い映画は撮れる。ハートとアイディアと才能と実行力があれば。ふつーは笠原さんに惚れるのだろうけど、わたしは野口さんに心底惚れたんだよーだ。考えてみれば、同じ年代で、同じ年頃に同じような映画を観てきたひとだから、共鳴するのも当然かもしれない。野口さんについて知れば知るほどそう感じるし、(到底及ばないけれど)映画に対する想いに共感する。

(評価:★5)

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