コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] アザーズ(2001/米=仏=スペイン)

最近流行りの「もう一度見直したい」系ムービー。
chokobo

シャマランの一連お作品と共通する、「もう一度見直したい」映画である。見る者を全く異なる先入観に導き、思いも寄らぬどんでん返しを見せつける。丁寧に計算しつくされた映画である。

素晴らしいのはこの美術とカメラだ。イギリスの古い屋敷と、ホラーを忘れさせるカメラの動き。これが素晴らしい。霧の木立の中、薄曇りの道を主人公が迷い歩き、そして夫との再会。このシーンだけで十分堪能できた。残された妻の思い。夫に会いたいという思い。そして霧の中迷う妻。薄曇りの木立が彼女の心理を包み込むように押し寄せる。このシーンがとても印象的で、このシーンだけで「映画」を感じさせてくれた。

オープン・ユア・アイズ』では現代劇。町の中を彷徨う主人公。天国と地獄を味わう男の心理。

この心理描写を楽しむ映画。単なるサスペンスなら、話の筋だけで楽しめば良いはず。この監督は映像と音楽と、登場人物の心理描写を大変シンプルに印象的な映像をもたらしてくれる。

ニコール・キッドマンはこのような神経質な演技が似合う。いかにもイギリス夫人。自意識の強さと責任感の強さが、その美しさに恐ろしさをかもしだす。一方『ムーラン・ルージュ』や『アイズ・ワイド・シャット』のように全く赴きの異なる演技もできる。今正に絶頂期にある女優である。

このいかにも派手な女優にかような地味な演技をさせて追い込むことも見事である。この風景、このストーリーに見事に適した演技であった。

特筆すべきはハヴィエル・アグィレサローベのカメラだ。あのビクトル・エリセの『マルメロの陽光』で、芸術を映し出すあのカメラ。見事なマクロとミクロの対比。その風景。これらの芸術をこのサスペンスで見事昇華させている。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)ことは[*] らいてふ よだか

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。