[コメント] 自虐の詩(2007/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
家族が先んじてこの映画を見て「面白かったよ〜」とか「感動したよね〜」とか言っていましたが、原作の理解もほどほどに放置しておいたのですが、とても後悔しています。素晴らしい映画でした。
簡潔に言いますと、この映画が素晴らしい理由は、あるワンシーンを見れば十分わかります。
それは、いかにも映画的で、映画としての時間を見事に描写した素晴らしいシーン。
熊本さんが日本に帰って来たのを迎えに行く際に、弁当箱に隠していた数珠繋ぎにした五円玉を見て、幸江が家を出たときのシーンに遡るところですね。彼女がお弁当箱から”せんべつ”と書かれた数珠繋ぎの五円玉を見て「こんなにいっぱい・・・」といい、お弁当を食べて涙するシーンがありますよね。
これだけ見ても、この映画の素晴らしさを感じることができます。この辺から涙が止まりませんでした。
幸か不幸か?
というバイアスと、
生きるか死ぬか?
という選択を、この映画では原作のテーストを生かしつつ見事に表現しています。
この二つのバイアスと選択が、生きる女性にとって必要であったり、苦悩であったりするのですが、この現実から逃れることなく生きる女性の姿を見事に演じる中谷美紀さんの演技力も素晴らしいと思いました。
所詮この世はゆがみが生じます。
主人公の幸江にとって、親に愛されなかったゆがみが、その後の人生に強く影響しているように思えます。
ところが散々な苦労を経由して、過去の記憶を乗り越えながらささやかな幸せが訪れ、ゆがみの揺り戻しが起きます。
人生が終わるときはプラスマイナスゼロだと言われていますが、その価値は金額でもなく名誉でもなく、たった五円の繋がり(数珠繋ぎ)でしかないのだということなんでしょうね。
そう考えると、どんな人とのご縁(五円)も全て同じ価値なのではないかと思いました。
2009/07/20
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