見事な映像、見事な展開、そして出演陣の豪華さ。いずれも肯定的に思えるのだが、この映画には本質がない。残念だ。

本質とは何か？？

僕の意識する『怪談』とは小林正樹監督の『怪談』である。今見ると実に茶番な映画と思えるが、それは現代の映画科学という技術力が当時足りなかったということであって、文学的な要素、つまり小泉八雲から始まる古典の世界を表現しようとする当時の『怪談』に、この現代版の『怪談』は遠く及ばないと思う。

『怪談』の恐怖（本質）とは語り継がれる恐怖のはず。この映画でも冒頭、語り部がその恐怖を表現しているが、映画の中でその語り口を実感するこができなかったのが残念だ。

全体に薄い印象の『怪談』だった。