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[コメント] キャスト・アウェイ(2000/米)

無人島と日常生活が同じ世界にありながらお互いが別世界のように思えるように、そこでのサバイバルも、同じサバイバルでありながら次元が違うように思うから、そのどちらかを比べたりどちらかに還元したりもなかなかできないんじゃないかなあ・・
蒼井ゆう21

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







無人島で生き残ることとこの日常を生き残ることって違うように思う。だから無人島で経験つんだ人が日常生活で強くなるかっていったら強くならないでしょ、たぶん。この映画見てると、無人島の生活が人間のもっとも基本的な部分であるかのように見せて、それがあればどこでも生きていけるかのように見せてるけど、それはただ無人島の条件に適応しただけ。だからといってどこの世界でも生きていけるわけではない。たぶん世界ってもっと複雑だと思うのです。いくら別世界のシステムの経験を積んでも、やがて人は今いるシステムのなかに埋没していくわけで、そのシステムに相互の関連性がなければ、その別世界の経験というのはあんまり役に立たなくなりそうだし、 忘れていくようにすら思う。或いはもしその経験が強烈ならば、その今のシステムに適応しようとする自分との齟齬が発生するだろうと思うから、余計生きづらくなるようにすら思う。

例えば、日常生活に戻り、喪失感に襲われたトムは言う。 「でもぼくは呼吸をし続けていくだろう」 それはたぶん、無人島の生活を踏まえたうえでの発言だろう。 でも、それは無人島での「条件」をあまりに無視しているように思う。 人間その条件にさらされれば誰でもそうなるだろう。 でも、この日常世界の条件は違う。その条件が違うように、 無人島での「呼吸」と、この世界の「呼吸」の意味もまた異なる。

呼吸が、息を吸って吐く、という次元ではない世界がこの日常の世界だ。 いくら自分がそれに気づいたとしても、やがてまた自然になるだろう。 問題は、その息を吸って吐く、という次元で生きることなのではなく、 息を吸って吐く、ということを忘れた世界で、忘れたままで、 息を吸って吐く、ということをしていかなければいけない、 ということだ。

それは時たま非日常に行き、息を吸って吐くことに気づく、 ということも選択肢に入るだろう。 でも、それもいずれ消え去るように思う。

少なくともぼくにとっては、 忘れたままでどう生きていくか、ということのほうが 切実な問題かも。

ただ、この映画は、その無人島と現実とのギャップみたいのも きちんと描いていて、そこらへんはよかったと思う。

(評価:★4)

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