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[コメント] アレクセイと泉(2002/日)

本橋監督曰く、本作のテーマの一つは「水」なのだそうだ。[下高井戸シネマ]
Yasu

私の地元の近くに、昔は地層の関係で水が出ない場所として有名だった土地がある。そこでは井戸を10m以上掘っても水は出ず、明治ころまでは毎日数kmも離れた井戸まで水を汲みに行かなければならなかったということだ。他の村では「あの村には娘を嫁にやるな」とまで言われていたらしい。

もちろん、水道が通った現在ではそんな苦労はすっかり過去のものとなっている。しかしこの映画の中で、村人たちが毎日泉に水を汲みに来る姿を見て、かつて小学校で習った、そんな昔話を思い出した。

この泉にはポンプもモーターもない。バケツを差し入れて手で汲み上げるしかない。配管工事をして水道を引くのはともかく、ポンプくらい設置しても良さそうなものなのにとは思うが、村人の誰もが当たり前のように手だけで汲んでいる姿を見ると、自分たちの意志でポンプのような「手抜き」を拒否しているのかなあ、とも思えてくる。ポンプを付ければ、大切な泉の水を必要以上に浪費してしまうかも知れない。彼らはそう考えているのかも知れない。

本橋監督によれば、移住を拒んでいる彼ら村人たちは、その理由として「村を出たら“水を返せない”から」と言っているらしい。「水を返す」というのは、この土地からもらった水でできている自分の体を、死んだ時に土地に還元するということだ。彼らの水を大事にする姿勢がよく分かる話である。

(評価:★4)

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