主人公は仕事（料理）にしか関心がない寂しい女という設定らしいが、その割にはこちら（観客）に仕事第一とまで思わせるにはその描写が不足している（プロ意識は確かにありそうだけど）。また、マリオに対して最初は反発していたのが、だんだん心を許すようになる…というのは分かっても、最後にいきなり結婚してしまうのはいかにも唐突。そこまで信頼し合えるようになる描写がこれまた足りない。

というわけで、いい食材でレシピも完璧なのに、オーブンに入れておく時間が短すぎて物足りない味になってしまった料理のような、そんな印象。料理と同じで、物語もじっくり熟成させなければ、美味いものはできないのだ。

音楽も同じテーマが何度も繰り返し流れるのでやや食傷する。最高の調味料だからいろんなところで使いたいのかも知れないが、ソースだけじゃなくたまには醤油も欲しいな。

念のため繰り返すが、材料はいいんだよ。だから逆にもったいないと思うわけで。

ところで余談なのだが、主人公の名前「Martha」は、ドイツ語の発音では「マータ」になるのに（みんなも「マータ」って聞こえただろ？）、邦題や字幕ではわざわざ英語風に「マーサ」という表記にしている。どうも納得いかない。