アルモドバルのヒッチコックへのオマージュ的作品との声もあるが、サスペンスとしての出来はそれほど高くないと思うし、何よりこの世界はまさにアルモドバルだ。色彩設計、カメラワーク、シナリオ、演出、テーマ選択、どれもがそつなくハイレベルだと思う。俳優陣の演技が、映画のクォリティーをさらに押し上げていて、ハードコアなゲイと野心的な俳優を見事に演じきったラテン系俳優のホープ、ガエル・ガルシア・ベルナルは見事としか言いようがないし、アルモドバルの分身的役柄を、フェレ・マルティネスが抜群の存在感を醸し出して演じている。そして前作「トーク・トゥ・ハー」でベニグノを演じたハビエル・カマラがおかまちゃんを演じているのだが、ここは爆笑必至。彼は凄まじく巧い俳優です。