[コメント] ミスティック・リバー(2003/米)
この町のパレード。(レビューはラストに言及)
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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華やかなパレード、笑顔で手を振るこの町の人々。きらびやかな装飾や太陽の光の前に、あらゆる物事が表に投げ出されているように見える。このパレードのシーンが本作のラストでなければ。
この町で小売店を営むその男は、何事も自分たちの身内で行動し、時には実力行使をおこない、自分たちの力で人を裁いてしまう。その男のやり方に口を挟む者は、この町には存在しない。その男がかつて殺した「ただのレイ」の実態は卑劣な犯罪者だが、男のなかでは「ただのレイ」でしかない。男の娘を愛した少年にとってその男は親の仇であるが、その男にとって少年は自分の娘を殺した殺人者の身内でもある。少年はこれからこの町でいかに生きていくべきか。
「あなたはこの町の支配者よ」、なんとも空恐ろしい言葉だ。だが、その言葉は意図せぬうちに、その男がこの町の中でしか生きられないという限界を暗示してもいる。男の背中の十字架はこの土地に縛り付けられた男への刻印でもある。男は償うことのできない罪を犯したが、娘の死がその報いであるわけもない。男は娘を失った。男はかつての友人を殺した。この男が赦しを得る日は遠い。
この町の不条理の前に深い傷を負った者、命を落としていった者。パレードはそんな苛烈なこの町の現実にはまるで無関心のように進むようにも見えるし、この町が隠し持ついびつさを別の形で再現しているのかもしれない。パレードは続く。
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