『ガタカ』に共感できて、『トゥルーマン・ショー』と本作『シモーヌ』に共感できなかった理由は全て不完全燃焼なラストにある。

　ＣＧで作られた架空の女優が人気の絶頂に駆け上るという設定自体は非常に面白かったし、シモーヌの無機的な感じも良かった。ともかく中盤までの展開は悪く無かった。

　ただ、最後に持っていく場所が、”家族愛”では余りに不完全燃焼だ。結局のところ、この映画は、最初に問題提起した”ＣＧで架空の人物を創りあげることはアリなのか？”という問いに対し、肯定しているのか、それとも否定しているのかが、さっぱり分からなかった。

　別に最後に”家族愛”を描くことが悪いわけではないが、ここまで引っ張っておいて、肝心の問題に対する回答を引き出さずに、曖昧な表現で終わらすのは、製作者として”逃げ”ではないだろうか？

　正直言って、結論は肯定でも否定でも構わなかった。ストーリーの構成上、最後に明確な結論があることが重要なのだ。それさえあれば、映画として、もっと盛り上がりのあるスッキリした作品になったように思うし、最後の”家族愛”も、もっとドラマチックになった様に思うのだ。

　核心をオブラートで包んだ肯定とも否定とも取れる中途半端な終わり方では、観客は泣くことも、笑うことも、怒ることもできない。