在日朝鮮人社会に固執する友人や、国籍を理由に付き合えないという彼女を前に、「俺は俺だ！」と、差別やジレンマにひとり立ち向かう主人公。しかし、そうした姿勢は一見進展に見えるようでも、在日という殻を蹴り破ったつもりが、より強固な殻に囲まれることにもなりかねない。自分を主張すればするほど、周囲から阻害され、その結果、一層意固地になるパターンは実社会でも結構見受けられるからだ。在日朝鮮人という偏見を受けてきた主人公であれば、尚更その危険性が高いだろう。

そんな息子の状況を察してか、特に理由を説明せずに韓国国籍に変えたと告げる親父は、息子の防衛する殻を粉砕したあと「円（殻）の外へ出ろ！」と言う･･･。

親父のこの行動が、在日社会にも自分にも固執しない、自分自身の気持ちの表れなのか？　それとも息子のために自分の主義を犠牲にしたことを示すのか？　正直よくわからない。　（だって、あの親父、自分を"言葉で"語らなさ過ぎるんでしょう（笑））　いずれにしても、この時点で、親父の世界が息子より広いことを示していることには違いはないだろう（ハワイにも行ってるしね）。　羨ましいばかりの親子像です。