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[コメント] 蝶の舌(1999/スペイン)

飛びたて!雛鳥たちよ!自由という名の伝書を持って!!
dappene

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ラストの「蝶の舌」という叫びは「自由という意識の連鎖」を象徴するもの。

モンチョがそれを理解していたかどうかはともかく、あの場面で叫ぶ言葉としてはふさわしくない「言葉」を選択したところに「自由」を感じる。抑圧された環境下でささやかな抵抗を示したという「自由」。そしてその抵抗の言葉が、(モンチョにとっては先生との不当な別れに際して思わず口にしてしまった「先生を象徴するもの」であるが)「蝶の舌」だったことはグレゴリオ先生の「自由はかけがえのないもの」という思想がモンチョに伝わったということを示唆している。

更に細かく解釈するならば、「蝶」=「人間」、「蜜」=「自由」、「花粉」=「思想の伝達」で、「蝶の舌」は「人間が自由を得る為の道具」ということになる。一度手に入れた自由は「花粉」を他に運ぶことによって別の「自由」へと繋げ、それらの自由はそれぞれの個体が再び享受できるものとなる。

悲しいかな、モンチョが繋いだ花粉が次の花を咲かせるのは39年後になるのだが・・・

顕微鏡については、次のような意味が伏してあると思う。

蝶の舌は小さくて顕微鏡がないと見えないのだが、結局顕微鏡で観る前に物語は幕を閉じてしまう。これは先生の思想がモンチョに直接伝達しきれなかったことを暗示していて、編集作業の中で落ちてしまった「未完成」のエピソードではないと思う。

ついでにいうと「ティロノリンコ」は「愛」の象徴で、「蝶の舌」とは花で繋がっている。もちろんストーリーの中では、先生はそんなことは意識していない。単純に面白い生態として語っているだけであるが、奇しくもモンチョは鳥と同じ行動で「愛」を表現する。

この映画のテーマは「愛」と「自由」であり、決して「反戦」や「成長物語」「望郷」ではない。

悲しいラストとは裏腹な力強い映画なのである。

(評価:★4)

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