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[コメント] はなればなれに(1964/仏)

遅すぎたゴダール入門編を、半世紀以上も経って再評価でコメント書き直し。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「追悼 ジャン=リュック・ゴダール映画祭」で2023年に再々鑑賞。

ゴダール嫌いの私ですが、『軽蔑』と本作は好きなんです。『アルファヴィル』も嫌いじゃないんだけどね、星1つだけど。今これを書いてて気付いたんですが、もしかすると30代前半(本作制作時33歳)のゴダール作品は好きだ、というだけかもしれません。あー、ゴダールの本質ではない作品群なのかもしれないな。商業映画を目指した(唯一のガッツリ商業映画と言ってもいい)『軽蔑』、ミシェル・ルグランを音楽に迎えた『はなればなれに』、自称SF(笑)の『アルファヴィル』とか、「売れ線」に色気があった時期かもしれない。

この映画を観るのは3回目ですが、洒落たシーン、素敵なシーン満載で超楽しい。何が好きかって、グダグダしてるところ(笑)。若者特有のグダグダ感と重なるんですよね、偶然かもしれないけど。

でも、ゴダールが描きたいのは、三文小説風B級犯罪でも、青春の彷徨でも、当然人間ドラマでもないと思うんです。彼の主題は「映画の虚構性」を暴くこと。それがゴダールの、というかヌーヴェル・ヴァーグの本質。先程「ゴダールの本質ではない」と書いたことと矛盾しますが。普通は、セットという「虚構」の舞台で、脚本に書かれた「虚構」の台詞を話し、芝居という「虚構」の演技をしたものを「本物」っぽく見せますが、本作は真逆です。ゴダールは、オールロケ、即興演出という「リアル」な舞台や芝居を、映像や音をバラバラに切り刻んで組み立て直して「虚構」に仕立て上げる。

「映画は作り物だ!」

これがこの映画のテーマだと私は思っています。話なんか何だっていい。でも、この映画最大の魅力は、作り物ではない自然な「躍動感」にあると思うんです。「虚構(作り物)」が強調された結果、「本物(リアル)」が目立つという妙。それが意図的だったかどうかは知りませんけどね。

あと、すっかり忘れてたけど、この映画、『気狂いピエロ』(65年)に続くんですよね。ゴダール自身は「『勝手にしやがれ』(60年)の続編」とも言ってるそうなんですが、それはどうなのかなあ?

余談

前述したように「追悼 ジャン=リュック・ゴダール映画祭」でシレッと上映されましたが、長らく日本未公開だったんですよね。何かに「日本では1998年に初めて上映された」と書かれてますが、どこで上映されてたんだ?本作が日本でちゃんと公開されたのは2001年2月3日ですからね。だって俺、その時「15年前に観たかった」って感想を残してるから。大学生の頃にゴダール初体験として本作を観ていたら、ゴダール狂になっていたかもしれない。遅すぎたゴダール入門編。おかげでゴダール好きにならずにすみました。原作小説の邦訳が出たのも2023年ですしね。てゆーか、原作あったのかよ?

(2023.04.29 ヒューマントラストシネマ渋谷にて再鑑賞)

(評価:★5)

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