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[コメント] ホッファ(1992/米)

ダニー・デビートうまいなあ。
chokobo

見ていて気づくことだが、カメラが時に俯瞰となり時に下からゆっくりと上昇する。この緊迫感が楽しい。この映画、冒頭は労働運動にのめり込む若き組合運動家の話だが、次第にその権力がマフィア的となり、実際マフィアと互角に取引を行うまでになる。冒頭と後半がまるで異なる映画のように感じる。

時代が行き来する。駐車場で人を待つ二人、そしてラスト。これは見事につながっていて印象的だ。この間、約40年ものこの二人の関係を綿密に、娯楽感たっぷりに描いて行く。決して心地よい映画ではない。むしろ”労働者”という餌を土台にのし上がって行く二人の姿と、真の労働意識から権力へと変遷する過程が面白い。アメリカにもこのような闘争があったのか、ということに今頃気づかされる。果たして本当にケネディによってこの二人は暗殺されてあのだろうか。『JFK』と対比して見ることもできて面白い。

ダニー・デビートはうまい。見事な演出と言わざるを得ない。この映画の主役は勿論ジャック・ニコルソン演ずる『ホッファ』であることは明白だが、全編を通してダニー・デビート演ずるボビーが完全に語り部となって存在感ゆたかに映像をまたいでいる。

これほど長い物語をフィクションとノンフィクションの境目で演出することがどれほど困難なことであるかは想像できないが、いくつかの時間を超越することで飽きさせず、理屈の上でもマッチさせることに成功していると思う。

今『カッコーの巣の上で』を見ると、ここで確かにダニー・デビートジャック・ニコルソンは共演していた。デビートにとっては地味ではあるが意味のある映画であったことだろう。ニコルソンは勿論この映画でアカデミー賞を受賞している。それから10年以上の年月を越えて、この二人が共演したことは異議深い。デビートは名脇役である。その男がこれほど娯楽性高く、テンションの高い映画を作れたことが素晴らしいと思える。

脇役だから『ホッファ』というキャラクターに惹かれたのか。それとも、この現実を倒錯するようなフィクションに映画的なものを見いだしたのか。いずれにしても、この映画は企画の段階でキャスティングにニコルソンを配置した時点で成功していると思える。

デビートの才能豊かな演出を大いに評価したい。

(評価:★4)

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