[コメント] シックス・センス(1999/米)
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この映画は全篇に仕掛けの張られたトリック映画なので、その落としどころの見当がついたかどうかで評価が分かれやすい、ように見える。
ただし、「主人公が実は死者でした」という展開は、もともと幽霊ものの話ではさほど目新しい着想とはいえない(逆に、誰も思いつかないような奇抜な設定だったら観客に受け容れられない)。それに、本作に関しては次の三つの情報、
1.開始前の「この映画には秘密があります」という予告
2.本編冒頭、主人公が襲撃される場面
3.予告編の「ぼく、死んだ人が見えるんだ……」という台詞で紹介される少年の特殊能力
これらを総合すると、どんな種類の仕掛けがある映画なのかは、早い段階で推察できてしまう人が少なくないのではないだろうか(それにしても、3の情報は映画の中盤まで明言されないのだし、宣伝段階では伏せておいたほうが適切だったのではないかと思えるのだけど)。僕も残念ながら、開始後しばらくして趣向はあらかた想像がついてしまった。このため、種明かしで物語の意味が反転する妙味を知ることはできなかったのだけれど、本作はその点を割り引いても、丁寧な構成で撮られていて興味深く観られる作品だった。
この映画では、現時点で流れている映像が登場人物の誰の主観視点に近いものなのかが、かなり明確に意識されている。少年の視点のときは幽霊が見えるけれど、他の普通人の視点のときは何も映らない。その区別にはもちろん、いわゆるフェアプレイの整合性を貫く意図もあるだろうけれど、それよりも映画の観客を「少年の視野」に近づける狙いのほうが大きいように思えた。少年のほかには誰も見えない「お化け屋敷」的な映像は、世界でただひとり観客だけが共有できることになる。その瞬間に観客は少年のひとりだけの「味方」にならざるをえず、だから少年の恐怖感や、そのことを誰にも告げられなかったこれまでの寂しさが、身に迫るように伝わってくる。「怖い映像」がただのショック描写に終わらず、より重層的な意味を持つ表現になりえているのは、なかなかあざやかな手腕ではないかと思う。
「視点」の話でもうひとつ書いておくと、本作はブルース・ウィリスという有名俳優が出演しているので、観客は自然に彼の登場する場面では彼を主役とみなして、彼の視点でものごとを眺めるようになる。ところが最終的には、この主人公の存在そのものが少年の視線によって成り立っていたことが判明する。だから観客にとっては、ただ意外というのではなく、これまでの「世界の見方」を根底から覆されるような構成になっている。有名俳優の既知のイメージを「誰が主役か?」の先入観、観客を引っかける手段として用いるのは、かのヒッチコック先生が某有名作で試みていた趣向と通じるかもしれない。(ちなみに、シャマラン監督はブルース・ウィリスが実生活で当時『ゴースト』のデミ・ムーアと結婚していたこともたぶん意識していたはずだ。本作の「夫婦の愛の証を確認する」結末にもかかわらず、その後離婚してしまったらしいけれど……)
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