[コメント] 勝手にしやがれ(1959/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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劇場で観直しました。ヌーヴェル・ヴァーグの傑作ですもの、一度は劇場で観ておきたいと思って。結局、ゴダールってやっぱりこの作品がすべてなんですよね、きっと。
映画史の上で革命的な作品と位置づけられる一本だが、かと言ってとてつもなくスゴい映画かというとそんなことはない。ただ、確実に言えることは、もうこんな映画はどうやって生まれないんだということ。どこが良いのか理解出来ないという意見も多いにあると思うのだが、それでも「なんかイイ」のが『勝手にしやがれ』なのだ。
ジャン・ポール・ベルモンドのかっこ良さにしても、ジーン・セバーグの美しさにしても、もう理屈じゃない。「きみと寝たい」とめげずに何度も繰り返すベルモンドに対して、華麗にかわしていくセバーグ。この掛け合いで何かが進んでるわけではないし、本当の意味での愛情や憎悪などは描かれないけど、「なんかイイ」のだ。
セバーグの最後の密告もなんとあっさりとしたことか。ここに劇的な感情を挟まないところが、この映画のあるべき姿なのだと思う。さらりと、印象的なカットや台詞が満載というところが。死に際のベルモンドが口にする「最低だ」の一言、それ以上もそれ以下も何も表現しないところが良いのだと思う。かっこいい死に様!
「山が嫌いなら、海が嫌いなら、都会が嫌いなら、勝手にしやがれ!」とこのときだけカメラ目線になるベルモンド。「ニューヨーク、ヘラルドトリビューン!」と高らかに叫ぶセバーグ。このふたりはそれぞれの登場間もないシーンから本当にインパクトが絶大。ベルモンドの帽子、サングラス、タバコ。セバーグの短髪、ボーダーのスカート。これらはもはやアイコン。
映画における物語の比重が高くなく、ジャンプ・カット連発の編集も手伝ってか、決して「線」にはならない素晴らしい「点」の連続がこの映画の形に思える。ただ、ダラダラと家で映像を流しておきたいタイプの作品で、そういうのこそ一発感動モノより長く愛してしまいそうなのだ。
「密告者は密告し、強盗は強盗し、人殺しは人を殺し、恋人は恋をする」。この台詞、本当に大好きです!
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