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[コメント] 必殺! 三味線屋・勇次(1999/日)

テレビスペシャル版レベルのお話と作り。ただ映画版中村主水シリーズの晩年はそのレベルにも遠く達していなかったため、これはこれで結構満足。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 何がどうテレビレベルかっていうと、まずは悪役のスケールの小ささ(中尾彬というキャスティングも含め)。これくらいの悪だったらテレビシリーズにウヨウヨしているわけで、そこに「映画ならでは」といえるような存在感はないです。多分テレビ版の最終回の方がスケールはデカい。

 更にテレビでお馴染みとなった音楽をこれでもかと多用することによって盛り上げを図るという、その演出の安さも気になります。とは言え曲の種類にも限りがあるため、同じ曲を何度もチョコチョコと流して何とか間を繋いでいる感じ。これは過去の遺産に頼り過ぎです。

 また上記だけでなく、その他の演出においても「映画的なもの」はあまり見受けられません。テレビ放送当時たまにやっていた2時間スペシャルに持ってくるのがちょうどいい感じの出来上がりです。

 ただ、それはそれでオーソドックスな『必殺!仕事人』が出来上がってしまってるんですよね。仕事のシーンにこれでもかの音楽を流してくれるのは歓迎だし、「金を取らずに仕事はしない」というモットーを遵守してくれてもいるし。少なくともフォーマット通りの物は見せてくれているわけで、“身の丈に合った”作品を作っているという点では『必殺!V 黄金の血』とか『必殺! 主水死す』なんかよりよっぽど評価できると思います。

 それでも残念だったのは、主人公である勇次(中条きよし)が主人公たりえていなかったこと。もともとこの人はニヒルなNo.2が売りなキャラクターなので、中村主水ほど人間に深みがない。喜怒哀楽も少ないから物語を回しづらいんでしょうね。それを人気あるからって真ん中に押し立てちゃったせいで、前半は阿部寛、後半は藤田まことに客の目線を持っていかれてしまっているんです。

 ラストの仕事シーン、ここをわざわざ藤田まことと二人だけの仕事にして、更に藤田まことがロウソクの火を消し、雑魚を片付けた上で勇次が堂々の仕事をこなしています。僕はこれは「中村主水から勇次への跡目相続の儀式」なんだと思っています。長年主役を張った藤田まこと自らが露払いを務めることで、中条きよしを正式な後継者として位置づける意味合いがあったんでしょう。それだけにその勇次自身の物語の薄さが悔やまれるところです。僕は勇次好きではありますが、秀(三田村邦彦)の方がもう少し物語が回しやすかったのかも知れないなぁなんて思いました。

(評価:★3)

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