[コメント] JUNK FOOD/ジャンク フード(1998/日)
山本政志はいわゆる、「インディーズの巨匠監督」の一人ですね。 私は石井聰互監督の方が好きなんですけどね。
この映画は、アメリカのミニシアターで見ました。 なんか、ポスターはすごくカッコ良かったんだけど・・・。
正直なところ、「相変わらずだなぁ」という感じでした。 相変わらずというのは、山本監督が いまだに「インディーズの巨匠」と言われ続けているところでもあります (私も使いましたけどね)。 日本の自主制作映画に関わる者達の間では、かつて、 「反商業主義」というのが会話の中に頻繁に出ていました。 それは、8ミリフィルムというメディアを手にして、 その小さなカメラによる小規模の撮影クルーで制作される映画には、 斜陽産業になりつつあった日本映画会社が送り出す作品とは 違う作品を送り出したいという意志があったからだろうし、 また、カイエ・デ・シネマを中心としたフランスのヌーベルバーグからの影響を 色濃く受けたような、私的映画への傾倒という一面も時代の流れであっただろうとも思われます。 そんな中で、日本も大森一樹や森田芳光などを輩出してきました。 そして、彼らが上手い具合に商業映画の世界に進出できたのとは対照的に インディーズの世界に留まる監督達もたくさんいました。
山本監督は自らの意志で インディーズにこだわっているのかもしれませんが、 もはや、そこに意味はあるのか、といった寂しさがあります。 むしろ、そこにしか存在できない理由なんてのを逆に考えてしまいます。
さて、前置きばかりが長くなりましたが、映画の内容です。 東京の24時間といったテーマなのでしょうか。 映画を通しての主役というのも存在せず、 複数のパートが無造作に並んでいます。 中盤から、刺青師、娼婦、チーマー、出稼ぎ外国人が 上手い具合いに絡み合い、暴力描写の快感として 映画の世界にのめり込める瞬間がありましたが、 だから、なんなのだろう、という印象です。 部分的に脚本は練られているのかもしれませんが 全体的な構成で考えると、整理できずにテキトーにツジツマを合せたような印象です。 短いカットで構成された、東京という都市の描写も心地良いモノでしたが 映画という一本の作品の中では、それらはオマケに過ぎないとも思うのです。
山本政志のこうした作り方は、若さという勢いが無ければ通用しない。 もう、若くも無いのに若作りをして、しかも、老練な構成力が無いこんな映画は 価値などあるようには思えません。 どうか、力のある若手にその椅子をゆずってもらいたい。
ウダウダ書きましたが、山本監督の作品で以前見たのは 『ロビンソンの庭』『てなもんやコネクション』しかありませんが、 どちらも好きじゃなかったもんですから、 あくまで個人的な感想でこき下ろしてしまいました。
実は以前、「石井聰互復活祭」という企画の一部で 利重剛などを含めた座談会がありまして、私は観客として見てた訳ですが、 妙に威勢のよかった山本監督は、最後に、制作が中断していた 映画「南方熊楠」の撮影資金のカンパをしたんですよ。 結局、映画は完成しなかったんですけど、 「てなもんやコネクション」では撮影資金のために結婚をして、その祝儀を資金に回したとか、 資金繰りに苦しむ山本監督なんていう印象もあって同情してたんですけど、 最近、知り合いから、 「彼は、制作費を飲み食いに使っちゃったから金が無くなったんだよ」 と聞かされ、真偽の程は定かではありませんが、 そんないい加減な人間性が今回の映画にも出ているようで 少しむなしくなってしまったのでした。
蛇足ながら、エンディングの歌は町田町蔵改め町田康で 町蔵ファンの私としては、彼の歌を聞けたのはラッキーでした。 とりあえず、この映画はビデオで見るときついと思います。 (98.9.20)
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