[コメント] 太陽の墓場(1960/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
何しろカメラがスゴイ勢いで動きます。カメラ自身が動くというより、パンするんですね、しかも勢いよく。これは衝撃ですよね。予算もなかったんでしょうが、限られた環境でこれだけの映画らしさを出せるとは、スゴイ。
大島渚のすごさは(1)キャスティング(2)ガッツ&ファイト(3)変態。以上ですね。
彼の生まれ育った環境だとか、当時置かれていた環境だとか、あらゆる要素が画面に爆発しています。岡本太郎先生が「芸術は爆発だ!」と申しておりましたとおり、この映画が映画として評価されるとしたら爆発そのものです。
大島渚は極めて理論派です。理論派の彼が映画という環境の中で爆発した理由はやはり当時置かれていた逆境の中から生まれたものだと思います。
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2010/10/25 自宅で再見しました。
池袋の文芸坐に大島渚監督の特集を見に行って、再度DVDで鑑賞したり、本を読んだり色々しています。
で、この作品について再度拝見しましたが、結論から言うと・・・
「良くわからない」
です。
でも、種々の本やら、当時の論評を読んでも、この「わからない」ということが、映画全体の主題である、というようなことが書いてありました。
要するに「破壊」だと。
言われて認識するのですが、このお話の展開は予想を覆すのみならず、最後の最後まで「壊れるぞ、壊れるぞ」と思わせて、本当に最後、思いきり壊れます。
ドヤ街が思いきり火災になりますね。
この「火」のモチーフが大島渚監督の主題にもなっていて、『日本の夜と霧』でもロウソクの燃えるシーンが印象的でしたね。
暗い社会を一気に燃やしてしまえ、という発想は安保闘争に敗れた全学連世代の、ある意味結論なんでしょうね。
すごいカメラだと思います。
そしてゴージャスな俳優陣。
松竹映画なんですけど、東宝映画でお馴染みの『左卜全』さんとか、若き日の『小池朝雄』さんなんかがでてますね。『刑事コロンボ』の声の方でしょ。
そして、黒澤明監督の『用心棒』に出演して、とても目立っていた大男の『羅生門』さんも出ていらっしゃいました。
若き有望な大島渚監督が、これだけの俳優を集めて群集劇を作るといのは、当時としてはかなり画期的だったことは間違いありません。
映画が斜陽に向かいつつある暗い時代の映画ですが、話のわからなさと混沌が見事に整理されていてとても素晴らしい映画であることをあらためて認識しました。
最後に、この映画を見る前に『第9地区』という映画を見たんですが、あのエイリアンが住む地区と、この大阪の愛燐地区が重なってしまいました。
おそまつ!
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