[コメント] ソフィアの夜明け(2009/ブルガリア=スウェーデン)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
映画というのはとてもありがたいことに、いろいろな国の文化とか実情とかトレンドを教えてくれる、という部分と、この映画の監督のように、ある意味命がけで作られた映画がそういう形式であれ後世に遺贈されるという面において文学とか音楽、芸術とは別の意味でとても貴重な財産であることを思い知らされます。
そもそもブルガリアについて我々はほとんど知りませんね。ヨーグルトぐらいしか。
そして大関の琴欧州ですか。
確か彼がテレビで母国に帰るという取材があって見ていたら、そこには牧歌的ないかにもヨーロッパの田舎という風景が映し出されて、家庭料理か何かを食べる、「ああ懐かしい味」的なにこやかな世界が写されていましたが、この映画を見るとあのテレビ映像が極めて稀な一部分でしかないことがわかりますね。
ブルガリアでも首都ソフィアでは、極めて貧しく、極めて暴力的で、極めていかがわしい世界の中で過ごす若者が多い?のではないか、と思わせます。
冒頭の団地をかすめて大空を映し出すシーンはいいですね。芸術的。
そしてアンダーグラウンドな世界がどんどん進みます。このあたりの語り口もいいですね。
精神を病んだ芸術家もどきと、彼が寄せつけようとしない演劇をする彼女。
そしてネオナチにはまりこむ弟。
この弟と兄(芸術家)の再会シーンがいいですね。
ネオナチに混ざって外国人を暴行する仲間の中に弟がいる。それを阻止しようとする兄の芸術家。
そして暴行を受けた家族の娘と芸術家の一夜の恋。
この夜の娘の言葉が印象的ですね。
「人々は病んでいるのよ!」
確かにこの映画のすべての人物は見事に病んでます。病気。
この監督の語り口がとても好感が持てますね。
ファーストシーンで弟がマンションのベランダでたばこを吸っています。
家には口うるさそうな父親。
突然家に帰ってくる兄(芸術家)。
そして母親を含む四人の会話から、この母親が後妻であることがわかってきて、弟がなぜ親の言うことを聞こうとしないのかがジワッとわかってくるんですよね。うまいねー
病んだ世界は東欧の貧しい国にも蔓延しているということです。
時々この映画の中でテレビニュースで政治的なことを語る政治家が登場しますが、これ現実と政治のギャップを示しているんですね。政治は虚像だと。
いいなー
こういう病んだ映画が堂々と語られるのはとても健全である証拠。
素晴らしい作品だったと思いますよ。
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