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[コメント] アブラクサスの祭(2010/日)

後ろ頭の映画。画面がロックになる瞬間があるも、ちょっと監督が真面目すぎる。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







アーティストの表現過程の物語にも見えるし、鬱病患者の治癒の過程にも見える。

原作未読なので分からないが、なんだか一生懸命原作に沿ってエピソードを拾い、なんとか絡めようとしている印象を受ける。おそらく監督は真面目な人なんだろう。 例えばキャラクター造形。小林薫か本上まなみ、このいずれかはもっと“天然”で、もう一人は“しっかり者”という少し“ハジけた”キャラの方が良かったと思う。例えば『椿三十郎』の奥方の天然さとかね。 何故かって? 登場人物全般が平板すぎて、主人公の真摯さが際立たない気がするんだ。

映画は全編生真面目に撮られているのですが、一箇所だけ画面がロックになる映画的なシーンがあるんですね。 坊主になったスネオヘアーが、坊主なのにスネオヘアーが(<言い直す必要はない)、波の前でギターを掻き鳴らすシーン。 ワンカットで撮影されたこのシーンは、計算外の緊迫感が生まれ、正にロックと言える映画的なシーンだと思うんです。 彼は、自身の叫びをギターに代弁させるんです。

そしてこの映画は、(アヴァンタイトルを除いて)後ろ頭で始まり後ろ姿で終わるのです。 映画は自己を見つめる主人公の姿を写し撮りますが、自分の後ろ姿、特に頭の後ろは自身では見えにくいものです。 何かここに人間臭い哲学が感じられるのですが、はたしてどこまで意図された演出なのか、私には分かりません。

(10.12.29 テアトル新宿にて鑑賞)

(評価:★3)

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