女性警官にお婆さんが言う台詞を生かしたいという意図は理解できるのだが、言い寄ってくる同僚警官が絡むエピソードなど話の流れを無駄に「蛇行」させている印象が強く、この面については不満がある。もっとシンプルに描いて良かったのではないか。

ストーリーの幹については、全くそつなく上手くまとめていると思う。法を犯すのはもちろん問題なのだが、生きるために法を犯さざるを得ない状態を作り出してしまうことはより問題である。老夫婦は慎ましく生きることすら否定されることに抵抗した。昨今の世界情勢も鑑み、よいまとまりを見せていたと思う。

ラストシーンについては個人的には空想と思っているが、あの老夫婦なら何としてでも生きているのではという観客の印象に応えるシーンであるとも思う。身も蓋もない言い方をするのであれば、どちらでもいいかなと。最後に海を見る老夫婦のシーンを入れてこなかった事を考えても、好きに解釈してくださいと言われているようで、好感を持った。

(2009.08.01 チネチッタ)