[コメント] GOEMON(2009/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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『キャシャーン』は、個人的には好きだった。たしかに無駄にごちゃごちゃとしていてガキっぽかったのは否めないけれども、へんてこなロボたちには独特の哀愁があって、色味が陰鬱である意味では抑制がきいていたし独特のすごみがあった。
しかし、この『GOEMON』はやせ細った小動物のように貧相で肉がそがれ迫力がない。時代考証がめちゃくちゃで、スーパーマンが何人も登場するからいけないのではない。リアルでないということと、リアリティーがないということは明確に別々の概念であり、虚構の物語にはリアルではないがゆえにリアリティーが要求される。この作品にはリアリティーがなかった。
走り方ひとつとってみても変だった。筋力トレーニング中なのではないのだから、あんなに腿を上げて走る必要はない。さらに、そのわりには歩幅が小さく、そのわりには進み方が早かった。脚色するのは結構だけれども、そこに描かれるすべてが物理法則に反してしまっていてはリアリティーのかけらも生まれない。人間が空を飛んでても良いから、そのときのマントの羽ばたき、風を切る音、空気の冷たさ、そういうものが表現できなければ映像としての価値はまるで無くなってしまうのではないだろうか。
もっとまずいのは筋書きで、まさか国家元首の首を取ろうとした人間の親族がのほほんと無事でいられるはずはなく、それに気づかなかったゴエモンさんは若年性痴呆症や発達障害などの疑いがあるのではないだろうか。要するに馬鹿すぎるだろ、という話。あと、結末は誰もが思いつくようなもので、そうであるがゆえに脚本家であればまっさきに排除するレベルだと思います。
良かったところと言えば、伊武雅刀さんの絶対零度のような存在感を堪能できたこと。また、広末さんがビジュアル的に素晴らしかったです。いつもは重要な役どころをことごとくふいにしてきた彼女ですが、今回ははまり役だと思いました。
ひょっとして、広末さんの長めのプロモーションビデオだと思えば価値があるかも。いや、でもやっぱりつまらなかったです。はい。
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