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[コメント] いのちの食べかた(2005/オーストリア=独)

「ああ、世界はなんてシュール」──雰囲気重視、無味無臭、訴求対象不在のドキュメンタリー。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 説明が少なすぎて何をしているのか解らない場面がしばしば。社会科見学的な意義を求めるなら、やはりある程度の字幕なりナレーションなりは必要と思う。「結果的に殺して肉になることは同じなのだから、過程の説明に意味などない」ということなのかもしれないけれど、だとすれば逆に従業員たちの会話が雑談なのか業務上の伝達・相談なのかくらいは理解したかった。論法そのものも基本的には「何が行われているのでしょうか?」→「○○でした」というワンパターンで直接的なメッセージ性はないし、結果、この作品で誰に何を訴えようとしているのか、制作者側の意図が見えない。

 んで、そのスタンス自体は決して悪いことではないと思うのだけれど、それじゃあこの映画が「真摯に主観を排し、淡々と事実のみに刮目した」作品かというと、そうでもない。画面つくりに関して左右対称やら色彩コントラストやら、うるさいほどこだわっていて、この「画面にこだわりたい」という思いは内容なんかよりずっと強く伝わってくる。その意味で、作品の肌触りは社会派ドキュメンタリーというより、どちらかと言えばキッチュ・アートに近い。けど、それにしちゃフツーのカットがダラダラ流れたりするし、何よりアートとして訴求するには画質が悪すぎる。

 初めて見たマシーンや工業的な段取りにはそれなりに興味をそそられたけれど、作品にはあまり魅力を感じませんでした。正直言っちゃえば「嗚呼!動物さんたちがボクらに命を……!(号泣)」なんて必要以上の加害妄想を刺激された上に「んでも肉うめぇし」「ですよねー」みたいな被虐的な観後感を期待してただけなんだけど。

(評価:★3)

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