[コメント] トランスフォーマー(2007/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この類の原点は日本のアニメであることは間違いないと思う。この映画の製作総指揮をスティーブン・スピルバーグがやっていることを見れば、それもうなずける。
『機動戦士ガンダム』や『ジャイアント・ロボ』もっというと『鉄人28号』だってそうだ。『エヴァンゲリオン』にしてもそうかもしれない。
要するに、本来意思を持たないロボットなどが人間に操作されることによって悪と戦うというパターンは、日本の科学の原点のような気もする。
高度な技術が進化を遂げて未来から来るロボットもいる。『ターミネーター』である。この主人公は自らの意思も持ち合わせつつ、人間に協力してゆく。
もっと言おう。『ターミネーター』の原点。『鉄腕アトム』である。
アニメの原点とも言えるこの手塚治虫ワールドの始まりは世界的に見ても画期的なことだ。
ということで、『トランスフォーマー』は、これらロボット映画の純粋培養のような作品となっていて、それぞれの利点を食いつぶすようなつくりになっている。ロボット生命体とかいう発想はこの映画が初めてかもしれない。
映画の導入部は実に興味をそそるつくりになっていて、得体の知れないロボットがエアフォースワン(アメリカ大統領専用機)に侵入し、情報を盗み出す。このウィルスに見まがうような行為を見出したペンタゴン(国防総省)で交わされる会話も楽しい。「中国か?」20年前では考えられない会話だ。
同じようなユーモアあふれる会話があった。車の性能について会話するシーンで「日本製か?」というのもある。
いずれもアメリカが自虐的に他国の宣伝をしているようにも思えるが、こういうジョークが映画の中で交わされるのは、アメリカの奥深さだろう。
アメリカ合衆国大統領が出てくるシーンもある。前述のエアフォースワンで赤い靴下を履いて寝そべっている。(顔は見えない)そしてスチュワーデスにワッフルか何かを要求する。スチュワーデスがそれを持って届ける途中つまみ食いをする。そして「まっずい!」と独り言をいう。このシーンも自虐的だ。(大統領をコケにしてる)
このようにして考えると、この映画はアメリカを自ら貶める表現を前半に持ってきて、後半ロボット同士が戦いあうシーンと対比させることで、もはやアメリカという国が自らの意思で機能しないことを伝えようとしているのではなかろうか。
思えばブッシュ大統領になって8年。アメリカは国家としての力強さを確かに失ってしまった。ブッシュが政権について最初の仕事は911対策である。しかし、イラク戦争を使って景気を上向かせた結果が現在のサブプライムローン問題というマイナスの遺産だ。この映画の中でコケにされている大統領こそブッシュであることを強く想像させるのだ。
砂漠の兵士が地球外から来たロボットと戦闘を繰り広げるシーンは正に皮肉だ。アメリカがイラクで陥った事実を別の形で表現しているとも思える。
結果としてこの映画はアメリカ合衆国大統領を痛切に批判し、「正義にあり方」について訴えかけた映画だったのかもしれない。
しかし残念ながら、映画全体は子供向けで良いとしても、ロボットのどアップなど、いずれも重たすぎて、何がどのように動いているか全く理解できなかった。
評論家が喜びそうな映画ではないが、単に子供向けというだけではないテイストを秘めている映画だとは思う。がしかし、最後にシリーズ化への意気込みが前面に出すぎて、少々辟易した。
もっと後半部分を工夫してほしかった。
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