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[コメント] 下流人生(2004/韓国)

とことん実直に映画を撮るイム・グォンテク。説教くさかろうとおかまいなし。今時の韓流シネマを撮る技術もあるであろう職人の彼が、その映像・音声のすべて韓国現代史そのものの物語として娯楽映画に仕上げた。ほとんど実話をつぎはぎして作ったような映画だというが伊達ではない。
SUM

シン・ジュンヒョンが音楽担当ということで、もっと壊れたべたべたな前衛ロックンロールやるかと思ったけれど、音楽は脇役に徹して、主に店内のBGMとして当時のヒット曲である彼の曲が使われるスタイルだった。 もちろん、チョ・スンウが出て行ったキム・ミンソンに再会するあたりは「ニムンモンゴセ(あなたは遠いところに)」(今は側にいない愛しい人を歌った歌)のインストアレンジだったりと、やはり直球勝負な音楽。 そのかわり、エンドロールでの曲はロック魂の叫びのような曲だったので、ちょっと満足。

一方で、韓国フォークの名曲「アチミスル 朝露」がデモ隊によって歌われるシーン。政治的な意味を持って運動圏で歌われたかつての禁止曲で、作ったキム・ミンギ曰く、元々は政治的な意味のない、純粋なフォークソングだったとのことだが、この歌を日本に訳詞で紹介するときは、純粋に詩として訳すのが普通だ。ところが字幕は、完全にこの歌詞を「運動」として解釈したようなニュアンスで出していた。文脈からいってそういう訳もありなんだろうなぁと妙に感動。

イム・グォンテクにして、『将軍の息子』以来の「ヤクザ映画」。『』以来の下層の物語。『春香伝』や『酔画仙』で見せた映像の「現代化」からすると少々意外だったが、韓流を拒否した韓国映画らしい韓国映画の堂々とした様にあっぱれ。

(評価:★4)

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