[コメント] RIZE(2005/米)
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別に差別的に考えている訳ではないですが、黒人の感情表現てやっぱりスゴイと思う。ゴスペルにしてもそうだけど、怒りや悲しみ、宿命までもを「負」としてでなく「正」として昇華させ、表現する彼らを神々しく思いました。
中でもダンスバトルのシーンはまさに神がかりでした。肉体一つで迸る感情を爆発させるその姿は、刹那的で美しい。体をぶつけ合う事はそんなにないのに、感情のぶつかり合いが目に見えるようで、なんとも格闘的だったし、男も女も、大人も子供も、「人間」であるという当たり前の事が胸にドンと落ちてきて、私はダンスバトルの間、始終鳥肌が収まりませんでした。スクリーンから吸い込まれて、自分もあの会場にいるものだと信じて疑ってませんでした。それだけに、その後の八百長がどうとかいうアレが高揚感をぶち壊してしまったのが残念でなりません。私の思いは所詮キレイゴトに過ぎないかも知れないけど、もはやあのダンスバトルは勝敗など関係のない域に達していると思って観ていた私にとって、あのシーンは本当に要らなかった。彼らはお互いにリスペクトし合ってないの?っていう不信感が湧いてきたし、トミー・ザ・クラウンの家に強盗が入った事もバトルに関連した私怨に思えてしまったし、濁りのない感情をぶつけて踊るダンスをそういう俗な事象と絡めてほしくなかった。私の勝手な思いでクラウンダンス・クランプダンスを聖なるものとして捉えていたから俗な絡みに違和感を覚えただけだと思うので、私の見方に問題があると言われてしまうともう何も言えないんですけど、それだけの純度を持ったダンスだったと思うんですよ、私は。子供たちの未来を考え踊るトミー・ザ・クラウンも、やり場のない感情をダンスにぶつけるドラゴンも、私はどちらも正しいと思う。そこに勝敗をつける事でバトルにもっともっと生気が宿るのは分かる。でも彼らは勝つ為に踊っていたのか?と不思議な気持ちになりました。RIZEする"這い上がる"ベクトルの方向がズレてしまったような感覚を覚えたし、あの力強いダンスの底にある脆弱さを垣間見た気がしました。そこを見つめる事もまたドキュメンタリーとしては必要だったのかも知れませんが、「映画」という媒体を通した事でダンスのテンションが落ちてしまう作りになっていたのは残念です。それでもやはりダンスバトルのシーンは必見の価値があるし、彼らに目を向け、人間の「力」を見せつけたこの映画は素晴らしいと思います(ただ、彼らの嫌がる「商業的」価値も併せ持ってしまっているところが悲しい・・・)。
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06.04.06 記
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