[コメント] ゲルマニウムの夜(2005/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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英語のタイトルがこの映画の本音なんでしょうね。
キリスト教に対する冒涜とも言えるこの作品ですが、その下世話なお話の筋はあまりにも苦しくて、このような映画が評価されて良いのかよくわかりませんが、映像としての美しさと音楽の素晴らしさは認めざるを得ませんね。
冒頭の牛が雪の中をゆっくりゆっくり歩くシーン。これ見事でした。そこにタイトルがかぶさる。英語のタイトル。神の囁きですね。神が囁くという実態は現実とどのように呼応しあっているのでしょうか。
ここでは生死の問題は排除されています。
生きることを前提に生きることの厳しさが雪国の情景に重なります。
生きることはかくも厳しい。
そしてカトリックの厳しい抑制の中で、性的な感情が左右に揺れ動く。
聖職の世界にも生きることの意味が常にまとわりつきますね。
『ファイトクラブ』という映画を続けて見たのですが、ここでも生きることの複雑さが描かれていました。
愛することに性別は関係ない。
これがこの映画の挑戦です。
『クライングゲーム』で展開した世界。
『ミルク』で表現された世界。
そんな世界の根源を突き詰めようとする作者の思惑が見えた作品でした。
それにしても音楽が素晴らしかったですね。この冬の雪国の世界と宗教的な心理社会の内面をよく表現できていたと思います。
ゲルマニウムのラジオとどのような関係があったのか知りませんが、映像美としてはとても優れた作品だったと思います。
2010/05/02 自宅
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