コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] メトロで恋して(2004/仏)

パリ版 『オータム・イン・ニューヨーク
リア

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







漠然と何かが満たされない,どーも愛を信じれない,でもって売れない俳優…こんな彼 アントワーヌ(ジュリアン・ボワッスリエ) を大人へと脱皮させたのは皮肉にも、結婚を決意した彼女 クララ(ジュリー・ガイエ) と共に受けた健康診断により発覚した、クララがHIVに感染していると宣告されてからの日々だった。。と、私はアントワーヌについてこう解釈したい。

アントワーヌ は今多少の痛みを伴っても、いずれはこの恋を遍歴として刻むだけで、また日々漠然と何かが満たされないだめ男に逆戻り、果ては堕落していき、女を口説く時はクララとの恋バナを糸口とする男…な気がしてならない。

が、

上映直ぐと終盤では確かにアントワーヌの顔つきは変わっていたように私には映った。どこか浮つき掴み所のない青年から凛々しい顔立ちへと。

友人や親に、「クララとは別れたんだ。」 と話す姿も、まるで自分自身に言い聞かせ納得しようとしている苦渋が滲み出ていたし、振り切れない想いの葛藤・苦渋の末の決断はクララを支え一緒になる事だった。

私はこんな彼 アントワーヌを、いけ好かない男。と思う反面、”信じたい” と思わせる変化が見て取れたと思う。

女目線で考えれば、アントワーヌの苦渋の決断は嬉しいが、手放しで喜べる状態にあるとは言えない。 支えて欲しい,側に居て欲しい,が本心でも、また離れていくかもしれない不安,相手を深く想えばこそ巻き込めないと言う思いとで。

この複雑で繊細な機微がよく描かれていて、感傷に浸ってしまった。

また、 HIVに感染していたと知る事になるタイミング。本作程 ”なんて皮肉なの...” と思うタイミングはないんじゃないだろうか? まさか自分がHIVに感染しているとは夢にも思ってない人が感染を知った時…等、 自分に置き換えて考えては、感慨に浸りながらの帰路でした。

--------

デート中、突然歌い軽くステップを踏み始めたのには不意を衝かれました。その軽快なノリはパリの街・景色に合っているとは思いますが、本作とはノリが違うと言うか…。ちょっと拍子抜けしてしまい、残念です。

不意にシーンが変わった時には時が経っていたりして、時間の流れ・経過が掴み難く、最初は違和感を覚えましたが、慣れると不思議とそれが効果的に感じ取れました。 時は待たずに流れていく、淡々と…と言った感じで。 また、常に一歩引いたような控えめなカメラワークも、ただ優しく見つめる視線のように心地良く好感でした。

'05.09@ル・シネマ

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。