[コメント] バタフライ・エフェクト(2004/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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誰でも一回は思うであろう「あの時こうしていれば、今頃はこうだったんじゃないか」という妄想。冒頭のカオス理論よろしく、ほんの些細なことで未来は変わっていたんじゃないか、と思うわけ。そして「過去に戻って未来を変えられる」という特殊能力を持つヘタレ青年のご登場。ハタから見れば現在の自分を変えるために一人奮闘する主人公はヘタレ。だが、ぐいぐい引き込まれる展開であり、ストーリーも破綻することなくスピーディーにまとめられていて、非常に面白かった。
「出会わなければよかった」という最後の決断は確かに後ろ向きなものであったかもしれない。だが自分勝手な行動であるとはいえ、ああいう能力を持っていたら何度も使いたくなるのが人間の弱さであるだろうし、その中で何度も失敗し辛い思いをしてしまったのなら、そういう決断をしてしまうのも無理はない。
人間は知らず知らずのうちに他人を不幸にしていることもあれば、他人の人生に影響を与えたりもする。恋愛なんてのは結局その典型で、どっちかが終止符をうつことによってもう一方が必ず辛い思いをしなければならない。
過去に何度か戻って複数のパラレルワールドを経験したことで、エヴァンもそれを学べたのではないかと思う。初恋の記憶はエヴァンの中にのみ、残っている。最後の選択では出会いまでも無きものとなってしまった。エヴァンは最後に選択した人生を後戻りできずに生きていく。それをいかに有意義にするかは彼次第である。これから人生の岐路で一般人以上にエヴァンは悩むだろう。今度は、人との出会いをもっと大切にして過ごしていくだろう。また父の能力が彼に遺伝したように、同じ能力を持った子供が生まれてくる可能性も十分にありうる。その子供に自分の能力の危険性を、そして一度の人生の重要性をどう伝えていくか。父が自分に伝え切れなかったこのこともまた彼のなすべき重要な使命であるように思う。
最後の選択、そしてすれ違うだけで会話のない、要はケイリーとの未来を匂わせることのないあのラストシーンは、逆にこれから広がるパラレルワールドの無限の可能性を提示するこれ以上ないラストだと思った。アイデアをフルに活用できていたように感じ、思わず脚本に嫉妬してしまった。
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